そば処 けやき庵


 今月の5月15日、火曜日の事。そぼ降る雨の中、仕事の依頼で持込をした時の訪問。
海に向かってあとちょっと。という所まで車を走らせ、所用を済ませて更に足を延ばして蕎麦屋を目指した。



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時間は午後の1時を回って、駐車場には1台の軽が停まっていた。
古びた農家を改装して店にする事は結構あって、ここもそんな民家の店。
酒蔵を営んでいるので、結構立派な造りの家だ。

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店の中に入ると・・・。電気を消した店内で老夫婦がなにやら作業をしている最中。
軽の車は店の人の所有みたいだ。店内に客は誰もいない。気づいて電気を灯けてくれたので、尋ねると営業しているというので大きな丸いテーブルへと進んだ。酒樽の蓋を流用した大きな杉のテーブルで、中央には藍色の綿布が載っている。老婆がTVも点けてくれようとするのでそれを制して席についた。
ご主人は今までの作業をやめ、なにやら別の作業にかかり始めた。蕎麦打ちのブースは透明な仕切りで囲われていて、これから蕎麦を捏ねるようだ。
暫く店内を見回していたが、注文も取らないのでこちらからおろしとざるとを注文した。老婆は同じ作業をしている。
 こちらの蕎麦は手捏ねであるが、押し切りで切る。包丁で切らないので、完全な手打ちとは言えないのでは?と、昔議論をした覚えがある。議論と言えるほど大層な話ではないのだが。

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座った場所の左手にカウンターがあって蔵の酒が並んでいる。昔、蕎麦を食らう客に試飲を勧めたりもしていたが、僻地ともいえる場所で客は殆どが車だという事もあり、今は勧められる事もないらしい。
主人は蕎麦打ち、婆やは今までの作業の続きに戻った。暫く待ってみても注文をとらないので、こちらからざるとおろしを頼んだ。


  そしてまた沈黙。


「なにをしているのですか?」 こちらから婆さんの背中に問うてみた。
「ああ、これ?塩麹を仕込んでいるんです。今年は塩麹が流行ってね、頼まれた数だけ納めないと」 と返ってきた。(但し福井弁で)
 なるほど、酒造でも麹を使いますもんね。岩塩と麹を混ぜて水を加えたものと、乾燥したままの2種類を用意している。客が持ち帰って加水して寝かせば出来るのだ。

「それにしても、半袖で寒くないの?今日はまた寒い日やざ」

今日は丁度いいと答えた。

確かに店の中はひんやりとしているが、気にならない。
親父が打ちあがった蕎麦を婆さんに渡し、婆さんが湯がき始める。
出来上がった蕎麦が出てきた。蕎麦と一緒にタケノコの炊いたのが乗っていた。
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「うちで採れたタケノコを煮たんやけど、口に合ったらどうぞ」と勧められた。 (但し福井弁で)
大根の漬物も乗っていた。出された物は残さない主義で、全て食べる。

肝心の蕎麦は、というと・・・十割蕎麦で捏ねたてを評価したいと思う。意味深だが。
食べ終わるとお婆が手を止めて話しかけてくれる。さっきの話の続きだ。塩麹や大根の漬物の話を一通り聞いてて、話題を蔵が仕込んでいる酒の話に振った。

  何ゆえ、漬物の話題なのさ、ここは蔵元でもあるんだぜ。

実は蕎麦を待つ間に、並んでいた酒の2本ばかりに興味を覚えた。


玄米酒とコシヒカリを使った酒

老夫婦は既に仕込からは引退していて、今は息子に任せているという。
それでも気掛かりなのか、経緯も含め詳細は把握している様子だ。

玄米酒は石川の某氏より強く勧められて仕込んでみたという酒で、まぐれにも最初から上手くいったと言う酒らしい。失敗したら一樽とはいえすべてが無駄になるから、余程の決心が要った事だろう。
玄米の種皮(糠の部分)だけが残り、中の胚乳だけが溶けていたという。

玄米と水と米麹で作った酒ではあるけれど、純米酒の表示が出来ないとも聞いた。
米の胚が入っているからだとか。多分精米割合が満たされていないからだろう。
 (詳細は調べて見ないと分りません。※1

そして、福井が発祥の地であるコシヒカリを使った酒

コシヒカリは本来、酒造好適米ではなく食用米として品種改良を行い、食感のよさで普及が広まった食用米だ。
この四合ビン2本を買い求めた。いまだに味見をしていないのでなんとも中途半端ではあるけれど、とりあえずは蕎麦記事なので。
このほかには、石川の蔵に製造委託した焼酎などが並んでいた。
免許が違うので免許を取得していない焼酎はつくれないからのようだが、関心はあるらしい。

あと、塩麹

 醤油屋で麹を買い求めて作った塩麹と味の比較をしてみるため買い求めた。
これもいまだ冷蔵庫に眠っている。なんだかんだとゆったりし過ぎ。


 ※1 精米歩合が8割以下を純米、特に精米歩合が6割以下のものを特別純米と呼ぶが、使用する米や麹米の使用割合などにも制約があるらしい。