日曜日の夕方・雨

日曜日の夕方・雨

葬儀式場はお寺
高速を使い早めに着くように出てきた

肌寒くはないが弱々しい雨が霧のように舞い落ちる

参列者は親族らを除けばまばらで
焼香を済ますと奥さんを見かけた
突然の事なので思いつく言葉も出ず
彼女もまた突然の事で実感が湧かない様子だった


   以前からいたずらが好きで

   よく寝たフリをしたり

   死んだフリして私を驚かせたのよ


とくに悲しむ様子もみせないで
むしろ懐かしむように話してくれた

昨秋には孫が生まれた事は年の暮れに聞いたが
今年の秋には娘の結婚が決まっていたのだと奥さんが言ってくれた
だから少々頑張っていたようだったとも


夫婦で蕎麦屋を営んでいた頃
傍目で見ていても仲のよい夫婦だった
ご主人は当たる事もなくおだやかにいつもにこにこ

娑婆に生かされている者とすれば
なんと無慈悲な運命だと思った



通夜の日の午後

猫が呼んだ
ドアを開けて様子をみると1匹の猫がいた
虎模様の野良猫だ
普通なら逃げてしまうのだが
近づいても警戒する様子もなく

そしてその後
暫くしてから外に出ると今度はもう1匹の猫と一緒だった
連れて来たのかどうかは分らないが
その猫もまた警戒をすることも無く
2匹で寄り添っている


イメージ 1


現れた2匹目の猫は病気なのか
毛が抜け落ちているところがあってみすぼらしく思えたが
その2匹目の猫の
淡い生成りの色こそが
先週会社に現れた姿が
着ていた色そのものだった



今日、月曜日

葬儀の行われているはずの時間に
その猫が会社の前でうずくまっていた

話しかけてやった


  ありがとう 通夜には行ったよ 今日は失礼させてもらったが